2017年度の日本RNA学会年会(第19回:会期7月19日〜21日)は、富山市で開催された。
連日、7月中旬とは思えぬほどの猛暑で、夏が好きな私でも正直、音をあげそうであったが、戻り梅雨とかで、青い空を見ない今夏8月の東京での暮らしから振り返ると、その猛暑も“懐かしく”感じられる程である。会場は富山国際会議場大手町フォーラム。JR富山駅から程良い距離で、徒歩でもアクセスできる。日本各地で見なくなった路面電車もアクセスに使うことができて、趣もある。フォーラムは外観も内装もすっきりした近代的なデザインで、横にある富山城跡とは対照的であった。オーラルに用いられた会場の居心地や設備も素晴らしかったが、ポスターセッションが行われたホワイエには四方のガラスから差し込む自然光が溢れ、一方冷房は程よく効いていて、なんとも気持ちのよい空間の中でRNA研究の議論を進められたことは有難いことであった。あらためて、年会長をお引き受けいただいた富山大学の井川さん、そして年会開催の主動力であった広瀬さん、甲斐田さん、また各研究室の皆さんには心より御礼申し上げる。また、御多忙の中、特別講演をお引き受けいただいたジーンケア研究所の古市泰宏先生、慶応義塾大学の岡野栄之先生、富山大学の白木公康先生に会員代表として御礼申し上げるとともに、男女共同参画の特別企画に愛知岡崎より日帰りでお越しいただいた坪内知美さんに感謝したい。
日本RNA学会年会は、来年20回目を迎える。これまで多くの人が関わり、また様々な方面でお世話になり、そして会員の皆さまの尽力で発展して来た日本RNA学会であるが、これを機に、本学会の、そして日本RNA研究領域のさらなる向上を目指して、年会としては何ができるか、どのようにあれば良いかを個人的に少し考えてみた。まずは、口頭発表者年齢の若返り傾向である。オーラルセッションは「長鎖非コードRNA」に始まり最終日の「低分子RNA」まで10枠。一般口頭発表は50題で、そのうち学生による発表は13題であった。総数の26%を占める。これが多いか少ないかは、各人それぞれ意見が分かれるところであろうが、全体としてみるとおそらく口頭発表者の平均年齢は40に満たないのではないか、と感じられた。日本のRNA研究の歴史は結構長い。が、RNA-SEQ、RNAi、CRISPR、CLIPなど、実験技術を含め本領域の進化は目覚しく、代謝度は高い。そのせいか若い研究者がかなりの割合を占める。それはまさにRNA研究領域の活性化にもつながっており非常に良い傾向ではあるが、年会での中堅やシニアによる、味のある、若手のお手本になる一般口頭発表がもう少しあっても良いのではないかと思う。若手が揉まれる、横のつながりを深める機会としては「RNA若手の会」があり、これとは一線を引き、お互いの特徴を明確にするのが大事であろう。続いて、質問者の収束傾向問題。ここは経験が活きており、中堅・シニアからの質問が多い。それに比べ、学生や若手研究者からの質問は少ないのが事実である。ポスター前では活発な議論が老若男女問わず、なされているのかもしれないが、言わずもがな、口頭発表の会場で経験を積むことも重要で、積極性が求められる。可能なら、質疑応答の時間を長目に設定しても良いかもしれない。最後に公用語。今回の口頭発表には3題、英語による発表があった。日本の大学や研究機関がグローバライゼーションをキーワードとして展開を図っている背景を考えても、発表の英語化を推進しても良いのではと感じる。全発表の公用語を英語にしてしまうことはないが、懇親会直前のセッションを一つ英語化し、海外からの招待者に発表とチェアをお願いする、次の日のポスターセッションで議論もしていただく、というのも案である。会長として最後の年、少しずつ提案をしてみようかと思う今日この頃である。
平成29年8月
塩見美喜子