メインホールの席に着いて、あれからもう5年が経ったのか、と多くの方が思われたのではないでしょうか。その年の3月11日にたいへんなことが起きましたが、海外から多数の参加者を迎えることができ、大好評のうちに閉幕したという印象が残っています。京都国際会議場を訪れるのは、それ以来でした。机が使える椅子の列と、椅子のみが並ぶ列が交互に配置された1階席に座り、そうそう、こんな席だったなと思い出しました。

今回の参加者は約1200人、そのうち国内からは300人あまりだったと聞きました。いつものRNA meetingの10倍以上の日本人が参加したことになります。なじみの顔も多くあり、なんといっても時差に苦しむことなく発表を聞けることに、居心地のよさのようなものを感じつつ過ごしました。口頭発表171題、ポスター発表722題と、朝から夜遅くまで、ほんとうに充実していました。

RNA2016のポスターがラボに届いたのは、昨年の今頃だったでしょうか。広げた瞬間「わっ、アタラシイ」と思いました。デザインといいトーンといい、2011年のものとは対極のものでした。他の学会やセミナー等のお知らせと並んでも異彩を放っていたのは確かです。すごいアイデアだと思いました。日本らしさを表現するのに、この手があったのかと。大袈裟だという方もいらっしゃるかもしれませんが、新しいことを取り入れる柔軟さと勇気は、研究に繋がるものがあると感じたくらいです。賛否があることも想像できますが、印象に残る仕事をすることは大事だと私は思います。

印象に残ったといえば、最終日のAwards CeremonyでのDr. Eric Westhofの講演もそのひとつです。彼の名字を漢字で表記することが気に入っているらしく、最初と最後のスライドに大きく「西園」と出していたことには少し笑ってしまいました。「West」が「西」なのは分かるけど、「hof」って何?と思い調べてみると、ドイツ語で「庭」を意味するのだそうです。講演の中では、素敵なことばもたくさん紹介していました。自然とメモをとったのは2つのことばでした。Pretend you’re happy when you are blue, it’s not hard to do. ナット・キング・コールが歌う「Pretend」の歌詞からの引用です。ネットで検索すると素敵な歌声を聞くこともできます。もうひとつは、Even a blind chicken finds a grain from time to time. ことばの意味の捉え方はタイミングや状況で違ってくるものですが、何かあったときのために(?)心に留めておきたいと思いました。海外の年会では、バンケット会場でこのような時間が設けられることがあったのですが、飲んで食べての最中では、スピーチに集中するのはなかなか難しいことでした。今回は大先輩の講演に落ち着いて耳を傾けることができ、とてもいい時間になりました。

バンケットは前回以上に盛り上がりました。舞妓さん・芸妓さんやサムライたちとの撮影会と化していました。写真を撮ることに夢中で、みなさん、食事の内容を覚えているのでしょうか? とにかく、日本RNA学会流「おもてなし」は今回も大成功でした。

学会に参加するといつも、明日からの研究意欲がグッとあがります。今回は、snoRNA関連の発表が増えていたことや、翻訳制御の話に刺激を受けて宮崎への帰路につきました。戻ってきて10日経ち、すでに“周辺”のことに時間をとられがちになってしまっています。この文章を書きながら、学会で盛り上がった気持ちがまたフツフツとしてきました。2016年後半戦、この感覚を忘れずに日々を過ごしていきたいです。


図1 メインホール


図2 ポスター会場


図3 バンケット1


図4 バンケット2


図5 バンケット3


上地珠代:宮崎大学・剣持直哉研究室・特任助教。ゼブラフィッシュを用いたリボソーム病の発症機序の解明がメインテーマ。教授・ポスドク2人・実験補助2人・大学院生3人・時々顔を出す学部生3〜4人とともに研究生活を送っています。

ラボHP:http://ribosome.med.miyazaki-u.ac.jp/labo/