キャリアパス委員の埼玉大・高橋朋子です。RNA学会の先輩、副議長・由香さんと編集幹事・岩川さんに「分子生物学会の前日に、Fukuoka RNA Commons/ISFRCB2024というのがあるよ」と教えていただき参加してきましたので、キャリアパス的観点でレポートします。

日本にはTokyo RNA Club以外にも、Kansai RNA Clubなどいくつかの“RNA Club”があり、今回はその一つであるFukuoka RNA Commons(Clubではない)とInternational Symposium for Female Researchers in Chromatin Biology 2024 (ISFRCB2024)との共催イベントになります。九州大学医学部百年講堂で開催され、オーガナイザーには九大・野島孝之さん、理研・岩崎由香さん、東大・深谷雄志さん、北大・栗原美寿々さんなどRNA学会のメンバーと、斉藤典子先生や岡田由紀先生といった日本を代表するクロマチン研究者が名を連ねていました。ISFRCBは女性研究者をフィーチャーするシンポジウムであることもあり、今回は演者13人のうち9人が女性で、ジェンダーバランスがかなり慎重に考慮されているという印象を受けました。テーマがRNAとクロマチン生物学なので、核スペックルやトランスポゾン制御に関わる研究が多かったですが、Tugce Aktasさんなど豪華ゲストも多く参加されていました。東北大・小川亜希子さんのRNA修飾の話も相変わらず面白かったですし、コーヒーブレイクでは普段はあまりお会いすることのないクロマチン界隈の方とも交流できました。エレガントな発表に圧倒され、「私は今、ここにいるのではなくラボに戻って研究するべきではないか?」と学会恒例の焦りを一瞬感じましたが、これも学会参加の醍醐味といえるかと思います。

写真1:Fukuoka RNA Commons/ISFRCB2024の様子(Donさんと深谷さんより提供)

翌日からは福岡国際会議場/マリンメッセ福岡で日本分子生物学会年会が開催されており、こちらでも多数のRNA関連のセッションが開催されていました。RNA学会会長の廣瀬さんと上述の北大・栗原さんのセッションなど、RNAや翻訳関連のセッションがとても充実しており、しかも裏番組でかぶっていたりして、全部のセッションに参加したい(けどできない)さてどうしよう、という状況でした。私はRNA(と自身の研究に関連のあるウイルスや核酸医薬関連)以外に、直接RNAではないけれどRNAも関係ありますよね?というセッション(例えばプロテオーム)にも参加して、そのまま懇親会にもお邪魔してみたり、分子生物学会らしい異分野交流を楽しみました。普段私は、RNA・ウイルス・核酸医薬界隈を行ったり来たりしていますが、これらの分野以外の方との交流や、新たな出会いも多分野をカバーする学会に参加する意義の一つかと思います。

今回の分子生物学会ではキャリア関連のサテライトイベントとして、EMBO Lab Leadership Course in Fukuoka(11月30日福岡国際会議場開催)というリーダーシップを学ぶコースも開催されていました。私自身は翌週(12月4〜6日)に東大定量研で開催されたEMBO Lab Leadership Course at UTokyoに声をかけていただき参加したので、そちらについてレポします。RNA学会からは上述の岩崎由香さんや深谷雄志さん、小林穂高さん、山中 総一郎さんなどよく知った顔ぶれが参加していました。個人的には「座学でリーダーシップは学べないでしょう」という考えで、「しかも朝から夕方まで3日間!?」と戸惑いながらの参加でしたが、想定を覆し、大いにリーダーシップについて学びました。そもそも座学では全くなく、インタラクティブなディスカッション形式で、系統だててリーダーシップに関する知識を学び、これまでの経験を通してぼんやりと頭の中に蓄積されていたことを明確にしたり、得意なことと苦手なこと、優先順位のつけ方、セルフマネージメント、コンフリクトの解決方法をみんなで一緒に考えましょう、という場でした。なにより若手PI同士で、ラボメンバーとのコミュニケーションやラボセミナー、オーサーシップ、リクルーティングなどラボ運営のtipsを共有できたことはとても有意義でした。3日間、朝9時から夕方5時半までスマホとパソコン禁止、お昼はみんなで隣の部屋で、というなかなか濃いイベントで、毎日会が終わった後、各自スマホをひらいて「げっ!」というまでがひとセットでした。福岡出張の翌週に東京で三日間缶詰というスケジュールに少々抵抗を感じていたのですが、参加してよかったと感じています。なんとなく参加した学会やイベントで、想定を覆し10年以上の付き合いになる人と出会ったりするので、学生さんには積極的な学会/イベント参加をおすすめします。最終日は東大定量研の忘年会にみんなで参加し、泊さんの伴奏で五輪真弓の「恋人よ」を歌い踊る深谷さんを眺めながら、福岡から始まり、“リーダーシップ”について考えた二週間が終わりました。
 さて、2025年度年会(仙台開催)でのキャリアパスイベントの計画を立て始めたところです。キャリアの分岐点で何を考えどう選択すべきなのか、「やりたいこと」と「やれること」のバランスはどう取るべきか、など取り上げてほしいテーマ、聞いてみたい話題がございましたら、お気軽に高橋までご連絡いただければと思います。

写真2:EMBO Lab Leadership Courseでやるべきことのバランスが取れているか確認したときの様子。