第13期のキャリアパス担当になりました埼玉大学の高橋朋子と申します。キャリアパスというとアカデミア全体を通して課題が多めの難しいトピックですが、RNA学会に所属されている皆さまが、今後をポジティブに考える一端を担えればと考えております。

私自身はもともと幼い頃から研究者を志し、ニュートンを愛読書として日々勉学に勤しんでまいりました...というタイプでは全くなく、本を読むのが好きで図書館に行ってシャーロックホームズを読んだり、ズッコケ三人組を読んだり、もしくは漫画を読んだりしながら幼少期を過ごしました(北村薫さんのスキップと重松清さんの疾走が好きです)。

大学で何を学ぶべきか悩んだとき、遺伝子の働きに興味があるかも...?と思い分子生物学を専攻しました。四年生になり卒業研究の配属先を決める際、遺伝子発現がどのように制御されるのかを解明したいと考え、シアノバクテリアという光合成細菌が強い光に対してどのように適応するのかを遺伝子レベルで理解することを試みました(Takahashi et al. 2010 J. Bacteriol. 192, 4031-36)。RNA業界(?)に踏み込んだのは修士からです。修士課程への進学を考えたときにノンコーディングRNAってなんだかかっこいいなと思い(当時今よりももっと未知の大陸感が漂っていました)、小分子RNAの塩基配列解析が面白そうな研究室を訪問しました。研究内容を説明していただき、部屋を見せてもらって、「ここだな」と思いました。当時はまだsiRNAはこんな塩基配列にすると良いよとか、ハエではAgo1とAgo2が使い分けられているらしいよとか、RISCがin vitro再構成できたらしいよとか、生化学の基礎的な研究が今よりも輝いていた時代な気がします。入学してみると私が所属していた研究室は当時としてはまだ比較的めずらしくいわゆるwetもdryも両方やっていて、基本的にはwetをしながらも自然とdryの知識も身についていったのは棚ぼたでした(ちなみに、ノンコーディングRNAってなんだかかっこいいなとはいまだに思っています)。

修士課程修了後、博士課程に進学するか企業に就職するか迷わなかったのかよく聞かれますが、迷いませんでした。博士号取得後アカデミアに残るか企業に就職するか迷わなかったのか、こちらもよく聞かれますが、迷いませんでした。ただ研究をやめたいと思ったことは実は今まで何回かあって、ただ単に今のところやめたことがないというだけのことです。進路を考えたときに、自分の進む道の先に行き止まりがあるような気がすることがあるかと思いますが(若い時や特に女性は)、私の場合は、アカデミアの方が行き止まりにぶつかる可能性が低いように感じました。

RNA学会ではキャリアパスに関する取り組みとして、年会におけるワークショップやその他イベント、学会参加のためのフェローシップや若手向けの各賞が設けられています。若手をエンカレッジするファクターとして存分に機能していると思いますが、自分が学生だった頃の記憶を辿ると、生き生きと研究していたかっこいい先生/先輩の存在が不可欠です。RNA学会は口頭発表の会場が一つで皆が一つの場所に集まっているため、基礎から応用までを網羅した幅広い研究におのずと触れ合います。RNA学会参加を通して、自分にとってのよいロールモデルがきっと見つかるのではないでしょうか。私の院生時代(修士1年から博士3年まで)はちょうど新学術領域「非コードRNA」の5年間にぴったり重なっているのですが、あの頃のかっこいい先生/先輩の姿はいまだに私の記憶の中にあります。

会報の同じ号(?)で、その頃のかっこいい先輩の一人、RNA学会のロゴ考案者 佐々木さんやxFOREST 樫田さんのアカデミア/企業-国内/海外奮闘記が掲載予定だと聞いております。楽しみです。博士号取得は個人的にはとてもおすすめですが、取得後のキャリアは本当に多様です。右に行こうと思っても左にしか行けないこともあるし、左に行こうと思っても右にしか行けないこともあるかとは思いますが、楽しく、やりたいことを頑張っていきましょう。私自身のアカデミア奮闘記はたいした話ではないので、RNA学会の時にでもお酒を呑みながら聞いてください。任期なし准教授、まではきました。

自分も含めこれからのキャリアに多様性のあるみなさまの、善き相談相手となれたらよいなと思います。私でよろしければ、キャリアパスについてご要望、ご意見いつでもご連絡いただければと思います。

第23回日本RNA学会@京都にて。学生の頃から友人のRNA婦人会の皆さまとミーティング。見かけたらぜひご参加くださいませ。
一緒に研究している柴田さんがウイルス系の学会で最優秀ポスター賞を受賞しました。現在博士課程1年で学振DC2にも採用内定しました。二人で大喜びした後、私はほっとしています。