日本RNA学会では、数年前より国際化担当を任命し、学会の国際化を進めています。昨年度はカナダのRNA研究者の方々とRiboClub 2013を行いましたが、本年度は11月2日から5日の日程で、オーストラリアのシドニーにて、日豪合同RNAミーティング(jajRNA; Joint Australia-Japan RNA Meeting / Japan-Australia Joint RNA Meeting)を開催しました。
日本からは、現会長である塩見美喜子さんを筆頭とする10名のRNA研究者にinvited speakerとしてご講演いただいたことに加え、歴代会長である中村義一さんや塩見春彦さんにもご参加いただきました。また、学会では10名の学生会員の旅費支援を行い、総勢としては30名以上が日本から南半球に渡り、RNAを共通キーワードに、大いに議論し交流を深めて参りました。
そもそもこの合同ミーティングの発端は、今から2年以上前、2012年に仙台で行われた第14回RNA学会年会において、当時学会長の塩見春彦さん、初代国際化担当であった北大のデレクさん、理研の中川さんと私の4人が、何となく雑談をしていた中でのことにさかのぼります(とはいえ、かなり記憶が曖昧なので、もしかするとその前から議論はあったかもしれません)。その時はすでに、翌年2013年にはカナダでのRiboClubの共催が、そして2016年にはRNA Society Meetingの日本開催が決まっていましたが、日本RNA学会の国際化を考える上で、もっとカジュアルに海外を巻きこんだミーティングの実績を重ねて行けたら良いね、という話をしていました。ちょうど、デレクさんがオーストラリア出身であったということもありますが、考えてみるとオーストラリアは地理的にも近く時差が無い(これは海外のミーティングに参加する上で極めて重要です。ディスカッションしたいときに睡魔が襲ってくることを心配しなくてよいので・・・)ですし、John MattickやThomas Preiss、Archa Foxなどを筆頭にRNA研究が大変盛んであるということなどから、学会として関係を深めて行く相手としてオーストラリアは最適なのではないか、ということになりました。早速デレクさんがThomas Preissをはじめとする主要な人々に打診してくれたところ、先方も非常に乗り気になってくれたとのことで、当初は2013年に開催しようと盛り上がったのですが、その後は結構ゆったりと物事は進み、結局2年越しのこの秋に開催となりました。その間、デレクさんがドイツ企業にヘッドハンティングされるというサプライズもありましたが、彼の貢献がなければこの日豪合同ミーティングは成し得なかったと思います。この場を借りて感謝いたします。
今回ミーティングの会場となったのは、シドニーの中心に位置するシドニー工科大学(University of Technology, Sydney; UTS)です。UTSには、会場の提供も含めて全面的に協力して頂きましたし、特にUTSのGyorgy HutvagnerとNham Tranの2人のRNA研究者には、実務的な部分をほぼすべて担当して頂き、大変お世話になりました。今回のミーティングで印象的だったのは、ポスター会場が屋外、というか、7階の学会会場のベランダで行われたということです。もちろん、天気が良ければシドニーの太陽を浴びながら優雅なポスター発表となったところなのですが、意外に寒くまた風が強かったため、何枚かのポスターが風で飛ばされてしまうというアクシデントがありました。しかし、さすがオージー達は動じることなく、“No worries”と言いながらポスターを拾ってきて、張り直してくれていました。
また今回は、invited speakerだけではなく、もともとポスター発表希望として参加登録していた学生さんやポスドクの皆さんにも出来るだけ口頭発表の機会を与えようということになり(とはいえ、それが決まったのが開催の2週間前というギリギリのタイミングであったため、突然口頭発表をすることになった方々はヒーヒー言いながら頑張って準備してくれた様ですが)、日本からも多くの若い方々が英語で素晴らしい発表をされていました。その堂々たる姿を見て、日本RNA学会年会の(一部)英語化も、現実的に可能かもしれない、と大変頼もしく思いました。
このjajRNAという枠組み、今回は大成功に終わったのですが、次回をどこでどうするかは今のところ決まっていません。もちろん、RNA 2016 Kyotoにはオーストラリアからたくさんの方々が参加してくれたら良いな、と思いますが、せっかく今回日本とオーストラリアの交流を深めたのですし、「継続は力なり」ということで、何か定期的なイベントができればと思います。例えば、今回のような比較的小規模な合同ミーティングを、毎年とは言わなくても隔年で開催したり、日本RNA学会の年会にオーストラリアからもゲストとして参加してもらったり(ただし英語化の議論をする必要がありますが)、などの方法があるかも知れません。理想を言えば、中国や韓国、シンガポールなど他のアジア各国も巻き込み、アジア・オセアニアにおけるRNA Society MeetingやKeystoneの様な存在になれば、それは大変素晴らしいことですが、大きなことを継続して行くにはそれなりの労力と費用がかかります。学会員の皆さんには、今後、どのように日豪の連携を、そして学会の国際化を進めて行くのがよいのか、ぜひ闊達な議論をお願いできればと思います。
今回の会場となったUTSのBuilding 10
7階の学会会場のベランダで開催されたポスターセッション
Speakers’ dinnerのメニュー。Thomas Preiss の粋な計らいでjajRNAの文字が入っていた。
東京<-->シドニー便は、シドニー早朝発着である都合上、比較的フリーな時間が多い旅程となった。初日は、ホテル到着が早朝であったためにチェックインできず、夕方のセッションまで時間をつぶす必要があったため、日本側invited speakerの9人(おっさんばかり)で動物園に行った。
最終日ミーティング終了後に行った水族館での一枚