皆様、初めまして。熊本大学大学院・修士二年の長と申します。今回、青葉賞受賞ということで、国際学会の参加報告を書かせて頂くことになりました。少し長くなりますが、現状も交えながら報告させて頂きます。

まず初めに、昨年の日本RNA学会年会にて青葉賞に選出して頂いたことに、心から感謝申し上げます。個人的には初めての日本RNA学会年会参加、ましてや学会での初めての口頭発表ということで、かなりの緊張状態での発表でした。元々緊張しいな性格ですので(そうは見えないらしいですが…)、初めの方の記憶はほとんどありません。後半は徐々に落ち着いてきたので、発表後は「受け答え、ああすれば良かったなぁ…」という後悔の嵐でした。しかし後日、受賞の知らせを頂いて、「伝わってた!良かった!」と本当に嬉しかったです。

副賞として、国際学会への参加を援助頂きました。私が参加したのは少し前になりますが、カナダのケベックで6月3-7日に開催された、RNA Society年会(RNA2014)です。カナダに行きたいという単純な気持ちと(小学生の時からの夢でした!)、どうせ行くなら大きい学会にという思いで参加を決めました。

熊本から会場へ

安さを重視した結果、熊本からケベックまで行き帰りともに3回乗り継ぎ(計6回!)ということになってしまいました。それに手違いがあり、同じ研究室から行く博士課程の牟田園さんとは、行きも帰りもほとんど別の飛行機。意図せず、初めての海外一人旅(行き帰りのみ)になってしまった訳です。海外は何度か経験があるので、とりあえず飛行機好きな私は「色んな種類の飛行機に乗れる~」とワクワクしていたのですが、後に乗り継ぎの大変さを身を持って体験することに。特にアメリカ乗り継ぎの時は面倒で、乗り継ぎは少ないに限る、と教訓になりました。英会話の良い練習にはなったのですが…。

へとへとになりながらもなんとかケベックに降り立ち、宿泊場所であるLaval大学の寮らしき所に向かいました。到着が朝だったので、部屋に入れるのか疑問に思いながらも受付に行くと、難なく入れて一安心。…と思って部屋に入ると、誰かが使った形跡が。「まさか違う部屋の鍵を渡された…?」と思いながらも、とりあえず荷物を置いて、会場まで下見へ。会場は宿泊地から、バスで15分程行ったところでした。学会期間内はバスのフリーパスが交付されたので、ケベック中心部を自由に動け、移動には困りませんでした。しかし、ケベックのバスはつっこみどころ満載。まずスピードが速い。これ電車だったっけ?と思うほど速くて、立っていると吹っ飛ばされかけました。また日本と違って車内に次のバス停名が出ず、周りの景色で判断しなければならないので、乗っている間ずっと気が抜けませんでした。そして降車時も、ドアの取っ手(?)を自分で一押ししないと開いてくれません。もちろん、何度か降り損ないました。バスの乗り方に翻弄されながらも、どうにか会場の位置を確認でき、いざ観光へ。ケベックの街は世界遺産なだけあって、どこもかしこもオシャレで綺麗。歴史にはあまり詳しくないのですが、ただ歩いているだけでも楽しい街でした。極度の方向音痴な私でも約1週間の滞在で大体の場所が分かるほど、全体的にコンパクトな街なので、方向感覚に自信がない方にもオススメな観光地です。カナダの方は日本人にも優しいので、是非機会があったら行かれてみてはいかがでしょうか?

一通り観光したあとで宿に帰ると、朝はあんなに荒れていた部屋が綺麗に整っていました。日本だったら片付け前には絶対入れないのに…、と海外らしさを感じた体験でした。

RNA2014

発表演題は口頭発表152演題、ポスター発表535演題で、RNAというくくりでこんなにも多くの研究者がいるのかと驚きでした。口頭発表はかなり広い会場で行われるPlenary sessionもあれば、小さめの会場で同時に行われるWorkshopもあり、項目ごとに規模の差を感じました。私の研究分野でもあるNon-coding RNAはPlenary sessionで、同じ分野の研究者の多さを実感すると同時に、その中でも自分の研究の特異性と面白さに気付くことができたと思います。

多くの発表演題の中で、私もポスター発表をさせて頂きました。ポスター発表は2日目と4日目の2日間、お酒を飲みながらという形式で、非常に新鮮なものでした。始まるまではポスターに来て頂けるのか、ちゃんと説明が通じるのか不安で仕方ありませんでした。しかし始まってみると、予想よりも多くの方が来てくださり、普段お会いすることのできない方と熱いディスカッションが出来ました。英語には不慣れなので、説明の仕方に戸惑ってしまうこともありましたが、最後に「Your research is very interesting !」とコメントを頂いた時は、涙が出そうなくらい嬉しかったです。

最終日に行われた懇親会は、立食ではなく丸テーブルに約10名ずつ自由に座ってのコース料理でした。牟田園さんが先に日本へ向けて旅立ってしまったので、私は一人で参加することに。会場の外で甲斐田先生を見つけた時には、本当に安心しました。その後予定時間になっても懇親会会場の準備が整わないのか、結局始まったのは1時間後ぐらいでした。やっぱり海外だなあ…と思いながらも、その間に甲斐田先生を始め、私の所属研究室に以前技術習得に来られたという企業の方等とお話が出来たので良かったです。懇親会会場に入る時には、ポスター発表時に知り合った日本の方々に紛れて安心しきっていたのですが、着席が遅すぎて各テーブルの空いている所を埋めろと言われ…。おかげさまで、一番前の席で海外の研究者に囲まれながらの食事となりました。そんな状況も、なかなか進んで海外研究者の輪に入っていけない私にとっては良い環境だったのかもしれません。このような機会にまた遭遇した時には、今度は自分から入っていけるよう努力したいです。

学会期間はあっという間に終わり、言葉では言い表せられない高揚感と共に、帰路につきました。帰りにも乗り継ぎのサンフランシスコ空港で置いて行かれそうになるというハプニングもありましたが、無事に一人旅を終えました。

青葉賞受賞、国際学会、そして現在

青葉賞受賞から1年半、国際学会参加から半年が経ちました。就職活動に奔走しながらの国際学会参加でしたので、研究としてはあまり進んでいない状況での発表となってしまいました。受賞時の内容から、もう一歩進んだ研究を交えて発表できなかったことが心残りです。

私は博士課程には進学しない予定ですので、今後このような発表の機会は減ると思います。しかし、「もっと英語力とディスカッション力を磨いて、何らかの形で国際学会にリベンジしたい!」という新たな目標ができました。国際学会への参加によって、世界のRNA研究を自分の目で知ることが出来たと思います。出発前に谷先生が仰っていたのですが、「国内でも海外でも、やっていることは同じ」ということを実感でき、より一層、世界に負けない研究をしたいと思えるようになりました。残された期間、世界中の研究者に認められる結果を、一つでも多く残したいと思っています。

修士課程で海外への国際学会参加は、金銭面の関係上、通常は難しいことと思います。そんな中このような経験が出来たことは、本当に嬉しいことです。素晴らしい経験が出来たのは私に関わってくださった皆様のおかげで、日本RNA学会で知り合いの先生方や学生さんが増えていたからこそ、海外に出ても非常に心強かったのだと思います。今後も縁を大切にしていかなくては、と痛感しました。

最後になりましたが、日本からRNA2014に参加された方々には、本当にお世話になりました。この場をお借りして御礼申し上げます。また、このような機会を与えて頂き、支援頂いた日本RNA学会にも重ねて御礼申し上げます。長々と拙い文章でしたが、お付き合いありがとうございました。


写真1-3 シャトーフロントナックとケベックの街並み


写真4 Plenary session用の口頭発表会場と牟田園さん


写真5 ポスター会場(左)と食事会場(右)


写真6 ポスター発表する筆者