男女共同参画担当幹事を、昨年度に引き続き今期も担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。さて、昨年報告しました統計では、本学会における、年会参加者や発表者の男女比(女性20%)は、学会会員全体の男女比(同19%)と同程度でしたので、男女とも一定の割合で年会に参加していることがわかりました。一方 で、評議委員や年会のプログラム委員や座長の割合は10%前後であり、まだまだという結果でした。この現状を踏まえ、今年度は年会のプログラム委員の女性の割合を14%と 微増させており、これは正会員の女性の割合(15%)とほぼ一致します。現状を知り、可能なところから男女共同参画を進めていければよいな、と思います。

さて、昨年の大会において始めました男女共同参画のランチョンセミナー、好評につき(?) 今年も行ないたいと思います。昨年のセミナー後のアンケート結果より、「女性に限定しない若手支援や、研究者のキャリアパスやリーダーの育成」についての話題を取り上げてほしい、という意見が多くみられました。そこで、今年のランチョンセミナーでは、 最近異動され、あらたなスタートを切った 3 人の方に、ご自分の歩んでこられた平坦だけでない山あり谷ありの道についてお話ししていただこうと思います。題して「私の研究人生:その選択と決意」です。
お話しいただくのは、昨年の10月に富山大学理学部化学科の教授に就任されました井川善也さん、今年の4月より近畿大学農学部バイオサイエンス学科の教授に就任されました佐渡敬さん、そして、この4月より名古屋市立大学薬学部病態生化学分野の講師に就任されました築地仁美さん、の3人です。簡単に3人の方々をご紹介させていただきます。

井川さんは、京大理学部化学科を卒業し、修士課程までは有機化学を専攻。博士課程より当時新任で着任された井上丹先生の生物化学講座に進学、D3 の秋に所属講座の助手になり、のちに博士を取得されました。その後、生命科学研究科の新設に伴い講座は同学科に移籍。助手時代には、主として自己スプライシングイントロンの構造機能相関の生化学解析を行いました。この間、スイス工科大学チューリッヒ校に1年間客員研究員として留学し、蛋白質酵素のケミカルバイオロジーを学んできました。2004年10月より九大工学部に助教授(准教授)として転任、RNA 酵素の人工創製を中心とした「つくる生化学」に研究の重点を移されます。そして、昨年10月より富山大学で(古巣学部である)理学部に教授として転任されました。3人の娘さん(中3、中1、小4)のお父さんですが、現在 人生初の単身赴任中だそうです。

佐渡さんは、北大でX染色体不活性化に関する研究で学位を取得。その後ポスドクとして、イギリス・ケンブリッジ大学で約2年ゲノムインプリンティングの研究、さらにアメリカ・マサチューセッツ総合病院で1年半、DNA メチル化と X 染色体不活性化の研究をさ れました。その後、国立遺伝学研究所で佐々木裕之先生(現:九州大学教授)が教授になられた時の初めての助手として着任。遺伝研では Xist RNA とそのアンチセンス RNA である Tsix を中心にマニアックな遺伝子改変マウスを作って、初期胚における X 染色体不活性化の研究にさらにどっぷりつかっていきます。遺伝研での任期満了と佐々木教授の九大への異動が重なり、九大生医研の准教授に就任。その後も、X 染色体不活性化の研究をつづけ、今年の4月に近畿大学農学部に教授としてラボを構えました。一人息子と奥さんと 家族3人で初の関西在住です。

築地さんは、東大薬学部で博士号取得。国立がんセンター研究所病理部でポスドク中 に一人目を出産。同業者であるご主人に合わせて留学し、バージニア大学発生再生センターでポスドクをする間に再度出産、双子だったため3児の母になりました(この時の生活が一番過酷だったそうです)。ご主人の帰国に合わせてジョブハントし、理研の中川研 のポスドクに。神経発生を研究するつもりで帰国したところ、中川さんに「絶対に non- coding RNAが面白いから」と説得されて linc RNA の研究を始め、RNA world の魅力に取り付かれる。5年前、当時研究していた linc RNA に結合する蛋白質として同定した蛋白質が、神経難病 ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因蛋白質であることが報告され、「次は これだ」と直感。理研の脳科学総合研究センターに移り、ALS の研究を始め、スプライソソーム異常が ALS で生じている事を明らかにしました。今年の4月より、ご主人だけを東京に残し子供3人と名古屋へ。家族に多大な負担をかけているのが心苦しいけれど、研究者として生き残るためには仕方がない!と赴任を決意。今後も RNA 代謝異常に基づく神経難病の病態解明と治療法開発を目指したい、ということです。

昨年は、残念なことに若い方たちの参加が少なめでした。今年は、ぜひ学生さんや若手研究者の方にもたくさんご参加いただきたいと思います。研究人生いろいろあるけれど、続けて行ったら楽しいこともたくさんあるなぁ、と思えるセミナーになることを期待して います。

第19回 日本RNA学会 男女共同参画企画:ランチョンセミナー(第2回)
〜私の研究人生:その選択と決意〜
日 時:2014年7月24日(木) 12:00〜13:00
講演者:
井川善也さん(富山大学理学部化学科:教授)
佐渡 敬さん(近畿大学農学部バイオサイエンス学科:教授)
築地仁美さん(名古屋市立大学薬学部病態生化学分野:講師)