大阪大学大学院 生命機能研究科 神経遺伝子学研究室 Yoo Hyebin

この度は、RNAJ国内travel fellowshipに採択いただきましてありがとうございました。今回、日本RNA学会年会に初めて参加して、口頭発表することができて本当に良い学びと経験になりました。多くの人々の前で自分の研究について発表したのが初めてで緊張しましたが、決められた時間内に研究内容について専門知識が無い人にも理解できるように発表することを心がけました。また、発表後の質疑応答では、質問者の質問を間違って把握したり、予想できなかった質問をたくさん受けたりしました。ほかの人たちが自分の研究で疑問を持つ部分はどこなのか把握することができ、研究を進めていく中で参考になるようなほかの実験方法など多様な意見をいただくことができました。今回の発表の経験を通じて、次の発表ではこのような疑問点が解消できるようにもっと十分な説明と、ほかの実験方法などを試み、研究目標であるRNA編集酵素ADAR1の変異によるアイカルディ・グティエール症候群様脳症の発症メカニズムの解明に近づいた実験結果を報告したいと思っています。


また、学会では私のような大学院生たちを含む多様な研究者の方々の発表も聞くことができて多くの学びになりました。その中で、2023年にノーベル賞を受賞したカタリン・カリコさんの「治療用mRNAの開発」のご講演がとても印象深かったです。カリコさんがmRNAについて研究している間、動物実験の結果、人工mRNAが体内に入ると炎症反応を起こし、動物が即死するという致命的な問題が明らかになり、アメリカ内の人工mRNA研究熱が減って、アメリカの大学でも人工mRNA研究は注目されなかったそうです。しかし、その厳しい状況でも教授職から身分降格と減俸を受けながら、人工mRNA研究を続け、修飾ウリジン含有mRNAを使うことにより、人工mRNAを体内に注入しても深刻な免疫反応を起こさない方法を確立し、mRNAが治療効果を発揮できるように体内で十分に長く生き残る方法を見つけたそうです。カリコ博士のノーベル賞受賞は、一人でRNAの可能性を信じて研究に没頭し、mRNAワクチンを開発するまでに数多くの軽蔑と嘲笑に耐えた末に得られた結果だと思いました。この講義を聞いて、今まで大学院生の立場で経済的に余裕がなくて研究が大変だと利己的に思っていましたが、現在も注目されていない分野を研究している研究者たちはどれだけの苦労と苦悩があるのかはじめて考えるようになりました。支援も受けられない研究をあきらめる人たちがほとんどだと思いますが、彼女の人工mRNA研究へのこだわり、人類に貢献する科学への信念、そして数々の逆境の中で彼女が捨てなかった希望は非常に尊敬に値する研究者の姿勢だと感じました。また、“研究中に直面する数々の逆境の中で自分を憐れむのではなく、次に何をするかに集中しなければならない”というお話に感動しました。現在も研究するにあたって実験結果がよく出ないなど色々な困難を経験していますが、その時にこの言葉を思い出して次に何をするか集中すれば、研究中に経験する小さな困難でも一つずつ突破していけると思いました。最後に、このような貴重な体験をする機会を提供いただきました日本RNA学会に深謝申し上げます。