福岡大学大学院 理学研究科 化学専攻 博士課程2年の緒方悠岐と申します。福田将虎先生のもとで生体内RNA編集機構によるタンパク質翻訳制御メカニズムの解明、および当該メカニズムを応用した遺伝子制御技術の開発に関する研究を行っています。この度、RNAJ Travel Fellowshipにご採択いただき、そのご支援を利用して第25回日本RNA学会年会に参加させていただきました。今回のミーティングは、私にとって非常に貴重な経験となりましたので、その内容をレポートさせていただきます。

今回の第25回日本RNA学会年会は、東京大学・安田講堂で開催されました。校内の建物からは長い歴史を感じられ、背の高い青々とした並木を歩いていると、ゆっくりと時間が流れているかのように感じました。その先に見えてくる安田講堂は中世の大聖堂を彷彿とさせる荘厳な出立ちで、背筋が伸びる思いで会場に入ったことを思い出します。
 

本年会の会場 安田講堂 (東京大学)


年会は3日間を通して開催され、口頭発表・ポスター発表ともに、RNAが関わる生命現象についての研究や、RNAの構造や化学修飾を対象とした化学的な研究など、多岐にわたるRNA研究の最新の研究成果が発表されました。今回はtRNAにまつわる発表が多数あった印象で、特にRNase LによるtRNA切断を介した翻訳抑制機構については考えたこともなかったため、大変驚かされました。他にも「私の研究にも取り入れてみたい!」と思うような独創的な研究アプローチや解析のアイデアなど、発表では沢山のことを学ばせていただきました。

Katalin Kariko博士の特別講演では、研究の着想からmRNAワクチンへの利用、ノーベル賞受賞に至るまでの道のりが語られました。シンプルな発想が、現在のRNA創薬には欠かせない技術として重要なブレイクスルーをもたらしたことに感銘を受けると同時に、基礎研究の大切さ、多角的な視点で物事を捉えることの重要性を再認識しました。Kariko博士のご講演は、困難な状況にも屈せず、信念を持って研究を続けることの大切さを教えてくれました。

私のポスター発表には、発表時間終了まで途切れることなく大勢の皆様にお立ち寄りいただき、大変貴重なご意見を数多く賜りました。特に、RNA編集技術と自然免疫の関連性についてのディスカッションや、翻訳制御技術の適応疾患拡大のアドバイスをしていただくなど、新たな視点を得る非常に有意義な機会となりました。また、以前RNA Frontier Meetingで知り合った同世代の友人にも来ていただき、研究の進捗や今後の展望について意見交換を行いました。私の所属する研究室には同世代の学生が少ないため、このように学会を通じて交流することが、研究活動の大きなモチベーションの一つとなっています。

加えて、本年会では、EMBOジャーナルのエディターを務めるCornelius Schneider博士の監修のもと、ポスタークリニックにも参加させていただきました。英語でのグループディスカッションは初めてだったので緊張しましたが、今後の研究活動に活かせる非常に実りある経験でした。

日本RNA学会年会は今年で三度目の参加となりますが、毎年、驚くような研究成果や卓越した研究発表に触れ、新たな情報を得る貴重な機会となっています。私が行なっているRNA編集研究は「生体内で何ができる」を理解し、それを「どのように使うか」が重要なポイントであると考えています。今後もRNAに関連する多様な生命現象への理解を深め、RNA編集を基盤とした新たなメカニズム解明および応用に貢献していきたいと思います。

改めまして、このような貴重な機会をいただきました程 久美子 年会長をはじめとする年会事務局の皆さま、並びに日本RNA学会の皆様に心より御礼申し上げます。