近畿大学大学院 薬学研究科 生化学研究室に所属しておりますD1の宮崎叶愛と申します。この度はRNAJ国内Travel Fellowshipsに採択していただき、誠にありがとうございました。

私たちは多様なRNA結合タンパク質が翻訳開始因子に加わることで形成される「非定型な翻訳開始因子複合体」に着目し、これを介した遺伝子発現制御機構の解明を目指しています。シグナルに応答する翻訳開始の制御とmRNA の安定性の制御との連携機構がpoly(A)結合タンパク質(PABP)を中心として行われていることから、私はPABPと直接相互作用し、翻訳制御に関与すると報告されている Paip1 の機能解析を通じて、PABP-poly(A)間の結合性変化により、翻訳効率が緻密に制御されるメカニズムを明らかにしようと、日々研究を行っています。このテーマに取り組むにあたって、これまでに報告されていた翻訳制御と相反するデータが得られたことから、ディスカッションあるいは発表を通じてRNAという奥深い分野に対し様々な方面からその実態の解明に尽力されている方々の考えを自身の研究に取り入れたいと思い、私は今年度初めてRNA学会年会にポスター発表という形で参加させていただく運びとなりました。

オーラルセッションにおいては、ノーベル賞受賞者の特別講演を含め、RNAを基盤とする様々な分野における最先端の知識を得ることができ、大変貴重な機会を得たことを痛感しました。特にKatalin Karikoさんのお話を受け、我々が行っているRNAに関する研究が多くの人々を救ったmRNAワクチンという形で社会に貢献したという希望抱いた反面、そこに至るまでの苦労を目の当たりにし、研究者として進んでいく心構えを改めて見つめ直さねばならないと気が引き締まりました。また青葉賞を受賞された戸室幸太郎さんをはじめとする若い研究者の方々の発表を受け、私自身ももっと精進せねばと大変刺激を受けました。

ポスターセッションにおいては、たくさんの方々と直接ディスカッションする機会を得ることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。まず自身の研究テーマと密接に関わっている内容のポスター発表を拝読・質問する機会を得たことより、自身がこれまでに得たデータを新たな視点で考え直すきっかけとなりました。また自身の発表には、たくさんの方々が訪問してくださり、様々な質問が飛び交うこととなりました。Possible modelやこれまでに得られたデータの見直すべき点等をご指摘いただいたことに加え、自身が今後どのように実験を進めていくべきか、その指針の一例もご教授いただき、RNAに精通するたくさんの方々のご指導のもと研究テーマへの理解がますます高まりました。

今学会を通して、RNAという分野に対する興味がより一段と強くなったように感じます。RNAの構造や治療への適応等に関しては、自身が普段行っている研究だけでは理解が進まない部分も多くあったので、そういった分野の最新の情報を拝読する機会を得たことは大変貴重であり、自身の研究にも活かしていきたいと強く思いました。

改めまして、程久美子年会長をはじめとする年会事務局の皆様、日本RNA学会の皆様にはこのような光栄な機会をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。