東北大学大学院薬学研究科・がん化学療法薬学分野D2の竹中 慶香と申します。私は修士課程の時にRNA研究の世界に足を踏み入れ、RNAリガーゼであるRTCB複合体によるtRNA断片量の制御機構について研究しました。現在は、RTCB複合体を介する経路と、ウイルス感染応答との関連性について研究しております。この度は、若手会員を対象にした国際会議参加支援「RNAJ Travel Fellowship」に採択していただき、ありがとうございました。本渡航支援を活用し、2024年5月28日から6月2日までイギリスのスコットランド(エディンバラ)で行われた「The 29th Annual Meeting of the RNA Society(以下、RNA 2024)」に参加し、ポスター発表を行いました。拙文ではございますが、現地の様子や、発表を通じて感じたことなどをご報告させていただきます。今後国際学会に参加したいと考えている若手会員の皆様の参考になりましたら幸いです。


RNA 2024は、エディンバラの中心部にある「Edinburgh International Conference Centre (EICC)」で開催されました。EICCの周辺には、エディンバラ城やスコットランド国立博物館、エディンバラの街並みを一望できるカールトン・ヒルなど、多くの観光名所があります。エディンバラは街全体がユネスコの世界遺産に指定されています。市内どこを歩いても絵になる素敵な風景が広がっており、歴史的建造物や、中世の街並みを堪能することができます(写真1)。今回私は、エディンバラ城や、イギリス王室の宮殿であるホリールードハウス宮殿、美しい絶景を堪能できるカールトン・ヒルなどを訪れました。これらの観光名所はいずれもEICCから徒歩圏内であり、多くの観光名所が市の中心部に集約されているのは、エディンバラの特徴の1つであると感じました。

写真1:エディンバラ城を背景に。



さて、RNA 2024の口頭発表のセッションは、RNA modificationやTranslation、Viral RNAs and innate immunityなど多岐にわたり、演題数は約130と多くの発表が行われました。特に、自然免疫やウイルス感染応答に関するセッションは、普段、ウイルス感染応答を主軸に研究している私にとって大変勉強になりました。このセッションはConcurrentでしたが、Plenaryと同じくEICCで最も広い会場で行われました。多くの研究者がセッションに参加し活発に議論するのを見て、ウイルスや自然免疫の研究領域が現在ホットであることを実感しました。ポスター発表については、3日間で合わせて約680演題が行われました。1つ1つのポスターのレベルが高く、載せられているデータ数も非常に多い印象でした。また、多くの研究者は、会場で提供されるお酒を飲みながらポスター発表を聞いておりました。国内の学会とは異なるこの光景は、私にとって非常に新鮮に感じました。私は、ポスターセッション2日目において、RNase Lによるウイルス感染応答とRTCB複合体との関連性について発表させていただきました(写真2)。ポスターには、30名近くの研究者に立ち寄っていただき、多いときは1回の発表で4~5名に聞いていただくこともありました。また、私と同じくRNase Lに関する研究をしている研究者も私のポスターに来てくださり、有益なアドバイスをいただくことができました。これまで参加した日本の学会では、研究領域が全く同じ研究者と出会うことはほとんどなかったですが、世界ではRNase Lを研究している方が多くいらっしゃることを改めて感じました。また、RNase Lを研究している方とディスカッションできた経験は、今後の研究のモチベーションアップにつながりました。私は、今回が初めての国際学会であり、伝えたいことを、英語で誤解のないように伝えることができるか、質問者の意図をしっかりと理解し、的確な返答ができるかなどドキドキしながら発表に臨みました。しかしながら、質問者とやり取りをする中で、伝えたいことが伝わっていることがわかり、英語でディスカッションすることに対して少し自信がついただけでなく、国際学会で発表することに対するハードルも少し下がった気がしました。また、共同研究者である、Brigham and Women's Hospital (Boston, USA) のPavel Ivanov博士と、ここまでの研究成果と今後の論文化に向けたディスカッションをさせていただき、非常に有意義な時間となりました。

写真2:ポスター発表の様子。



RNA 2024の最終日には、スコットランド国立博物館でClosing dinnerが開催され、多くの研究者の方々とお話しさせていただいたり、ダンスに参加させていただいたりしました。ダンスは1曲目から非常に盛り上がり、世界の研究者の方々のテンションの高さに驚きました。国内の学会でダンスを踊る機会はあまりなく、最初は抵抗がある方も多いかと思いますが、多くの研究者と気軽に交流できる点で非常に魅力的であり、国際学会に参加する醍醐味の1つなのかもしれないと感じました。今回私は、積極的にダンスの輪の中に入ることはできませんでしたが、また国際学会のClosing dinnerのような場でダンス等が行われることがありましたら、積極的に参加し交流の幅を広げることができたらなと思います。RNA 2024は、連日7:45から22:00頃までとハードスケジュールではありましたが、1つ1つのプログラムが充実していたため、1日1日があっという間に過ぎていきました。今回初めて国際学会に参加したため、参加前までは英語で誤解のないように伝えられるかなど様々な不安がありました。しかし、世界中の同じ研究領域の研究者の方々と話すことができましたし、なにより研究に対するモチベーションが非常に上がりましたので、RNA 2024に参加して本当に良かったと思いました。今後も、積極的に国際学会に参加していきたいと思います!


最後になりますが、この度は、RNA 2024への参加にあたりご支援いただきましたことに御礼申し上げます。また、指導教員の富岡 佳久先生と秋山 泰利先生、貴重なアドバイスやサジェスチョンをいただきましたPavel Ivanov博士に、この場をお借りして御礼申し上げます。RNA 2024での経験を糧に、良い成果を報告できるよう引き続き精進してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。