東京大学理学系研究科・濡木研究室の澤田和宏です。2023年度の第24回日本RNA学会において光栄なことに青葉賞をいただくことができました。第24回年会では多くの方に発表をお聞きいただき、様々なアドバイスや応援の言葉を賜り、大変貴重な経験をさせていただきましたこと、改めて御礼申し上げます。この度青葉賞の副賞として海外渡航支援をいただきRNA Society Annual Meeting 2024(以降RNA 2024)に参加して参りましたので、これから海外学会に参加される皆様の参考とモチベーションになることを願い、僭越ながらその様子を共有させていただきます。

今回のRNA 2024は自分にとってはじめての国際学会でした。はじめての国際学会となると中々勝手の分からないもので、服装・持ち物・心構え等、様々な心配事がありました。本稿では折角ですのでRNA 2024を通して感じた参加の心得のようなものを共有できればと思います。
まず服装に関してですが、RNA 2024はラフな服装で参加している人がとても多かったです。特に最終日のバンケットでのダンスは長時間にわたるので動きやすい服装での参加がおすすめです。さて、基本的にラフな服装の参加者が多いRNA Societyですが、一方で、それゆえ発表の日だけはフォーマルな服装を着るのも有効だと思いました。自分の場合、発表日以外はラフな服装でしたが、発表日はスーツで参加したところ、「今日は発表なのか?」や「発表聞きに行くよ」などの声をかけていただくことができましたので、発表日はフォーマルにするのも一つの戦略かと思います。ちなみに、学会によって服装は大きく異なるようなので、RNA Society以外に参加される方は参考程度にとどめてください。
次に持ち物についてですが、こちらは一般的な海外旅行用の案内が参考になると思います。ネットで検索するだけでも色々なサイトがありますので、是非そちらを参考にしてみてください。と、全て丸投げでは流石に芸が無いので、学会参加ならではのポイントをいくつか挙げさせていただきます。一つ目は当たり前ですが発表資料です。ポスター、プレゼンを入れたUSB、更に補足用のデータを印刷して持参するなどすると便利だと思います。自分の場合はポスターに入りきらなかったデータや図を印刷して持参したので、ポスター発表で興味を持ってくれた人にはそれらの資料を見せながらより詳細に説明することができました。二つ目として、着替えは余裕をもっておくと良いと思います。空き時間も知り合った人達と観光やディスカッションをしていると洗濯などの時間がとれないこともあると思います。備えあれば憂いなし、ということで、洋服などは多めに持っていくといいかもしれません。
最後に学会参加中に関してです。個人的に、特に学会参加中に印象深かったのは共同研究の話が多かったことです。ポスターセッション中にもとある大学の方から共同研究の勧誘をいただきました。お誘いをいただいた経緯としては、ポスターセッション中に「この研究を今後も続けていくつもりはあるのか?あるとしたらどういう方向で続けていきたいか?」というような質問をいただき、それにお返事をする形でディスカッションをしていたところ、共同研究の勧誘をいただくに至りました。国際学会で発表するような研究となると、既にある程度完成し、自分では満足したものを発表することが多いように思います。ですが、更にその先の課題や展望を幅広い方面に持ち、なおかつ言語化できるようにしておくと、こうした機会にも巡り合えるのかもしれません。この他にもポスターセッション以外の時間に研究の話をしていると、「実は今こんなプロジェクトを進めていて、君とならこんなタイアップができると思うのだが、どう思うか?」というような話をしていただけることが何度かありました。また他にも、構造生物学者としての意見を求められることもありましたが、いずれにせよ、最先端の研究計画について密にコミュニケーションを取ることができるのは大変勉強になるとともに、共同研究としての発展性もあると思います。ポスターセッション中は聴衆も多いのでじっくりと議論をする余裕は無いかと思いますが、特にRNA societyでは各セッション間の休み時間が長く(お菓子やお茶も出ます!!)、そうした時間には比較的じっくり議論ができると思います。
 ここまで偉そうに(?)学会参加体験記を書いてきましたが、どれも海外学会初心者の戯言ですので、参考程度にしていただければと思います。ただ、二か月前の自分のように、これから初めての国際学会を迎える方が、少しでもより有意義な体験をする助けとなることができれば幸いです。

写真1 RNA Societyのcoffee breakで提供されたお菓子。甘いお菓子とお茶を片手に研究の話をしたりポスターを見たり、大変幸せな時間でした。

さて、後半は折角なのでスコットランド・エディンバラについてご紹介させていただきます。ちなみに、自分と同じくRNA 2024に参加された京都大学の音成さんの参加報告も既に掲載されていますので、併せて是非ご覧ください。
エディンバラはスコットランドの首都で、中心部にあるエディンバラ城をはじめ歴史的な建物と街並みの残る素敵な都市でした。滞在期間中は生憎の天気なこともありましたが、晴れた空とエディンバラ城の組み合わせは大変絶景で中世のスコットランドとその歴史に思いを馳せる素敵な経験になりました。曇り空と石造の街並みの組み合わせもまた雰囲気があって素敵でした。余談ですが、土砂降りの中でも傘をささない人が多いのも印象的でした笑。「英国紳士は傘をささない」という言葉がありますが、スコットランドでもそうなのでしょうか?ちなみに、ロンドン大学の人に「イングランドに行ったことが無いから知らないんだけど、ロンドンの人って本当に傘をささないの?」と聞いてみたところ、「自分はフランス出身だし、周りにもロンドン以外出身の人が多いからよく分からない」とのことでした。
また、エディンバラは『国富論』や「神の見えざる手 (invisible hand)」という言葉で知られるアダム・スミスや『ハリー・ポッター』シリーズ著者のJ・K・ローリングにゆかりの土地ということで、その銅像やゆかりの場所、お土産物屋さんなどもありました。とても素敵な都市でしたので、是非機会がありましたらお立ち寄りください。

写真2 アダム・スミス(左)と僕の見える手 (visible hand) (右)

末筆ですが、この度はRNA 2024への参加に際し支援を賜りましたこと、大変感謝いたします。また、指導教員の濡木先生をはじめ、本研究を支えてくださった皆様にもこの場を借りて改めて御礼申し上げます。今回の経験を糧に、更に面白い研究ができるように精進して参りますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。