奈良先端科学技術大学院大学 分子免疫制御研究室に所属しております博士後期課程2年の廣木秀哉と申します。この度、RNAJ国内Travel Fellowshipsに採択していただきありがとうございました。

私たちは、自然免疫システムによる病原体、環境因子、自己成分の認識機構ならびにその後の炎症反応に至るシグナル伝達機構の解析を行っています。その中でも私は、環状RNAを介した炎症応答の制御メカニズムの解明に取り組んでおります。この研究を進めていくためには、免疫学だけではなくRNA研究の最新の知識を取得し、最前線でRNA研究をされている皆様のご意見を伺うことで視野を広げたいと考え、昨年度に引き続きポスター発表をさせていただきました。

本年会の目玉の1つであるカタリン・カリコ博士の特別講演は生中継で行われ、新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックから多くの人々の命を救うことに繋がったmRNAワクチンの実現、そしてノーベル賞の受賞に至るまでの幾多もの困難を乗り越えてこられたご経験についてお伺いすることができました。一方で、質疑応答では会場が笑いに包まれる場面もあり、カリコ博士がユーモア溢れるお人柄であることも知ることができる貴重な講演となりました。

口頭発表やポスター発表では、これまで私が知らなかったRNAの構造や修飾、疾患におけるRNAの役割や医薬品としてのRNA研究など、RNAにまつわる多岐に渡る分野の最新動向について学ばせていただきました。また、本年会は学部学生の無料での参加が認められており、学会員である私たちに交じり、多くの学部学生が議論に参加している姿も印象的でした。懇親会では、口頭発表で気になった点について発表者に直接質問させていただいたほか、様々な研究機関の先生や学生の方々と研究の苦楽についてお話しすることもでき、非常に実りのある交流を行うことができました。

私のポスター発表には開始前から大勢の皆様にお越しいただき、数多くのご意見を賜ることができました。中にはRNA研究者が集まる学会ならではの研究アプローチや、私が同定した環状RNAの医薬品としての応用可能性についてのアドバイスをいただくなど、新たな視点で自身の研究を見つめ直す機会となりました。今回得ることができた知識とアイデアを研究室に持ち帰り、さらに研究を発展させていきたいと思います。

今回の学会ではRNA研究の多様な魅力に触れるとともに、日本には様々な視点からRNA研究に取り組んでいる仲間がいることを実感することができました。今後もRNAに関する情報収集を続けていくことで、免疫学だけでは解き明かすことのできない新たな自然免疫システムの理解に貢献していきたいと思います。

改めまして、このような光栄な機会をいただきました日本RNA学会の皆様と程 久美子 年会長をはじめとする年会事務局の皆さまに心より御礼申し上げます。

本年会の会場となった東京大学の安田講堂内