大阪大学大学院生命機能研究科および北海道大学大学院医学院に所属しております博士課程4年の高桑央と申します。この度、日本RNA学会による国際会議参加費支援に採択をいただき、2023年5月から6月にかけてシンガポールで開催されたRNA 2023に参加させていただきましたので、そのご報告をさせていただきます。

大阪からシンガポールへは6~7時間ほどのフライトで到着しました。日本との時差も1時間しかなかったため、あまり疲労を感じることなくチャンギ空港に降り立つことができました。空港からはシンガポール地下鉄であるMRTを利用して約1時間で、会場やホテルのある地区に到着することができました。MRTはクレジットカードで乗車することができ学会期間中を通して非常に便利な交通手段でした。

学会の初日はオープニングセッションが夕方から開催される予定になっていたため、午前中はJunior Scientists activityに参加しました。Junior Scientists activityでは、学会に参加する学生で少人数のグループをつくり、マリーナベイサンズ近くにある科学博物館に訪れました。海外の学生と研究の話や身近な話題について話す機会は日本ではほとんどなかったため、非常に貴重な経験となりましたし、非常に仲良くなることができました。

写真1. マリーナベイサンズ (左)とアートサイエンスミュージアム (右)

学会のセッションの内容はRNAの構造から転写、スプライシング、翻訳、長鎖ノンコーディングRNA、小分子RNAなど非常に多岐にわたるものでした。私自身は長鎖ノンコーディングRNAとRNP顆粒・相分離に関連する研究を行っており、学会開催前から要旨集を読みながら楽しみにしておりました。長鎖ノンコーディングRNAのセッションで特に印象に残ったのは、Igor Ultisky博士のCRISPRiシステムを用いた細胞老化の生存をサポートする長鎖ノンコーディングRNAの探索とその機能解析に関するトークです。同定した長鎖ノンコーディングRNAの中には、偽遺伝子から転写されるノンコーディングRNAが含まれており、親遺伝子の翻訳産物のプロセシングを制御するという非常にユニークな機能的役割を果たす点で非常に興味深いと感じました。テクノロジーのセッションでは、学会開催前から注目していたRNAを標的とした近位ビオチン標識法であるO-MAP法を用いた研究成果が報告されていました。この手法は自身の興味があるRNAの近傍に存在するタンパク質、転写産物、ゲノム領域を包括的に解析することが可能であり、イメージングにも応用可能です。オリゴヌクレオチドプローブを用いるため比較的安価でかつ汎用性が高いと感じたため、今後多様な長鎖ノンコーディングRNAを解析するためにラボにも導入したいと思いました。この他にも各セッションにおいて非常に興味深いトークが数多くあり、基本的な研究背景を聞くだけでも勉強になり有意義な時間を過ごすことができました。

写真2. サンテック・シンガポール国際会議展示場

私自身は今回の学会で、膜構造を持たないオルガネラが分離して存在するための分子メカニズムについての研究成果を発表しました。ポスターを掲示するパネルの配置が非常に密になっており、前半と後半の入れ替わりの時間には非常に混み合っていて発表を開始することができないトラブルに見舞われました。仕方なく少し離れたところで、パソコンの画面にポスターを表示しながらポスター発表を開始しました。私の拙い英語ながらもポスター発表を聞きにきてくれた方々は非常に熱心に質問・ディスカッションをしてくれました。また、研究成果をプレプリントとして公開していたため自身の研究の宣伝をすることもできました。

学会期間中にはクレジットカードがATMに吸い込まれて取り出せなくなったり、帰国後すぐにコロナに感染したりとハプニングもありましたが、学会の合間にはシンガポールの観光地を数多く巡ることができました。また幸運なことにPoster Presentation Awardsを受賞させていただき非常に実りのある学会になりました。

最後になりますが、RNA 2023への参加にあたりご支援してくださった日本RNA学会の皆様に厚く御礼申し上げます。