COVID-19の発生から約2年が経過しました。日本では第5波が収まり、元の生活を取り戻しつつありますが、お隣の韓国では感染が拡大してますし、オミクロンという得体のしれない新しい変異株が登場するなど、まだまだ終わりが見えない戦いに愕然とします。グローバル化が進んだ現代社会においては、世界的に収束しないと意味がないことがよくわかります。ワクチンや治療薬が全世界に普及することが唯一の解決策なのかもしれません。各国リーダーたちの英知に期待したいと思います。

国内は対面で開催される学会も増え、ようやくコミュニケーションできる機会が増えたことはありがたいことです。先週は分子生物学会の年会が横浜で開催されました。本学会の前会長でいらっしゃる塩見美喜子さんが年会長をされたので、今回はRNAに関係するセッションが多く、本学会員や関係者が多く参加されたのではないかと思います。11月の生化学会がオンライン開催でしたので、分子生物学会がどうなるのか、皆さんやきもきされていたかと思いますが、タイミングよく、新規感染者が激減し、対面で開催できたことは、本当にすばらしいことです。年会長やご関係の先生方は、ここ数か月、大変なご苦労をされたのではないかと推察いたします。改めて、美喜子さんのご努力と英断に感謝したいと思います。

私も3日間フルに参加させていただきまして、大変有意義な時間を過ごすことができました。口頭発表はハイブリド方式でしたので、聴き手側からすると会場にいるよりもむしろオンラインから参加した方が聴きやすかったですし、複数のセッションを掛け持ちしたり、むしろメリットがあるという印象を持ちました。ただ、発表する側からすると演台の前から会場のオーディエンスに向かってトークする方がやはり緊張感や臨場感があっていいものだと思いました。これがウィズコロナの世界での新しいスタイルになるのかもしれません。

一方で、ポスター発表はとても新鮮に感じました。大きなポスター会場には、たくさんの参加者が集まり、皆さん活発にディスカッションしている光景は久々に感動しました。おそらく2年ぶりだったからでしょう。私の研究室の学生やスタッフも、久々の学会とあって、気合を入れて準備をしていました。今回はじめて対面の学会に参加した大学院生もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?ポスター用のプリンターがフル稼働したのは本当に久しぶりですね。学生たちが、偉い先生方の前で堂々と発表し、質問に答える姿を遠くから眺めながら、改めてポスター発表の重要性を感じました。参加した学生は一様に活性化されてますし、個々の学生から、感想や学会で仕入れた情報などを聞くと、やはり対面式の学会はいいものだと実感します。私も久々に学会後の高揚感を覚えました。

私たちシニア組はポスター会場を周りながら、共同研究者を探してはディスカッションしたり、昔の知り合いと他愛のない話をしたり、ラボのOBOGの近況を聞いたり、RNA学会のお仲間たちと情報交換や人事の話 (内緒の?) などなど、大忙しでした。モニター越しではなく、直接会って話をすること、やはりこれが一番楽しいですし、重要ですよね。自分が学生だったころは、ボスたちがポスター会場で研究とは一切関係のない立ち話をしている姿をみて、この方々は何をしに学会に来たのだろうか?と思ってましたが、今自分がまさにそう見られているんでしょうね。そこにはサイエンスとソーシャルなコミュニケーションの切っても切れない関係があるわけですが、学生に白い目で見られないように、ほどほどにしないといけないですね。

私の任期は、3月までですので、今回が最後の巻頭言になります。2期4年間、務めさせていただきました。まずは、学会員の皆様に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。特に自分が何をしたという実感は全くありませんが、一学会員としてまじめにRNA研究に取り組ませていただきました。振り返るとこの間、世の中の流れとともに学会の英語化が進みましたし、次の世代を担う若手が着実に成長し、また成果を出し、毎年、本学会員が何かの賞を受賞するなど、とてもうれしいできごとがたくさんありました。

幸か不幸か、RNAが一般に広く知れ渡ることになりました。これは、会員の皆様のご協力のおかげですが、ウイルスのことやワクチンのことを、専門家の観点からわかりやすく伝えることは、とても重要です。実際へんなデマやうわさが流れた時期もありましたから、本学会がある程度の役割を果たしたのではないかと思います。このようなアウトリーチ活動は、ウィズコロナの世界においても、続けていく必要があると思います。

その一方で、この2年間は、学会活動が大幅に制限されたのも事実です。特に海外への留学をあきらめざるを得なくなった学生や、日本への入国がペンディングになっている留学生がたくさんいる状況には本当に心を痛めています。将来の選択や進路を大幅に変えざるを得ない方もたくさんいることでしょう。おそらくコロナ禍は、我々シニアより、若い世代に与える影響の方が遥かに大きいでしょう。内向きな日本の学生を鼓舞し、背中を押し、グローバルな舞台で活躍してほしい、という我々共通の思いを打ち砕くような状況には忸怩たる思いを感じています。RNA研究を継続的に発展させていくには学生を含めて、若い世代への支援が不可欠です。そのために、本学会として何ができるかを皆様と一緒に考えていきたいと思います。

さて、年明けには評議員選挙が控えています。新しい執行部の方々には、RNA学会のさらなる発展のためにがんばっていただきたいと思います。皆様、ぜひジェンダーバランスも考えての投票をお願いいたします。

最後に、日ごろから、本学会の活動を支えていただいている評議員の皆様、幹事の皆様に感謝申し上げたいと思います。特に、副議長の廣瀬さん、庶務幹事の伊藤さん、編集幹事の甲斐田さん、会計幹事の築地さんには、至らぬ私を支えていただきました。また、集会幹事の金井さんには、この困難な状況の中、2年がかりで、鶴岡からオンライン年会を開催していただきました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。