最近の記事、たとえば、3月8日付 読売新聞のジョセフ・ナイ元米国国務次官補による「地球を読むー現代の戦争と情報戦—」によると、戦争とはもはや兵士と兵士が直接殺し合うものではなく、敵から遠く離れた場所にとどまり、膨大な情報を処理し、そこから有用な情報を速やかに抽出し、遠隔操作で無人機を送り込み、的にピンポイントでミサイルを打ち込み、敵を破壊する、さらにはミサイルや爆弾なんてものも一切使用せず、情報ネットワークを介して敵の内部に深く入り込み、その中枢システム、つまり、コンピュータ(のソフト部分)を撹乱または破壊する「方式」に変わってきた、とのことです。
このことは、現代の兵隊さんの主要な部分は日々銃を撃つ訓練をしているわけではなく、実はコンピュータを用いた情報解析技術を(私の想像では、おそらく)怖い教官から叩き込まれ、そして、日々空調の効いた部屋の中でキーボードを連打している、ということらしい。つまり、もはや軍事的な前線というものはなく、コンピュータの画面そのものが戦いの場ということらしい。これって、何かと似てない?徴兵制を採用する国、例えば、イスラエルでは若者が最先端の情報解析技術を軍隊で習得し、兵役義務終了後、その技術を活かして、情報関連ベンチャーの起業やゲノム情報解析に活躍するそうです。実際、イスラエル人の研究者仲間から「バイオインフォマティクスをやる学生の方がウェットの実験をする学生より多い」という話を、最近、聞きました。日本でも、近いうちに、同僚のバイオインフォマティシャンが自衛隊出身という現実が出現するのでしょうか?
写真の石は、沖縄のとある岬で拾ったものです。娘と二人でその岬の先端から怖いほど青黒い海を、引きずり込まれそうな誘惑に抗しつつ眺めていると、不意にアカウミガメがぽっかりと浮かび上がってきました。驚きと喜びで眺めていると、それは岩に砕ける波にもまれて、揺れながら、でも、うろたえている風でもなく、しばらく漂い、なにかを思い出したようにさっさと碧い海の中に消えていきました。
(2015年5月)